神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

大正4年お札博士フレデリック・スタールが京都府立図書館で見た納札集

上の絵葉書の中央に写っている外人が誰かわかるだろうか。先日ナンダカアヤシゲな人に見せたら、ズバリと「お札博士スタール」と解答していた。スタール博士は来日中着物を着ていたことで知られるが、この写真では洋服のようだ。私も中央の人物がスタール博…

芸艸堂のPR誌『美術タイムス』

飯澤文夫「続PR紙誌探索(1)」が『日本古書通信』4月号に載っているというので、京阪書房で買ってきた。そう言えば、高橋輝次氏も『雑誌渉猟日録 関西ふるほん探検』(皓星社)によれば、定期購読せずに必要の都度京阪書房で買っているようだ。さて、飯澤氏…

郷土玩具収集家としての宮脇楳僊こと宮脇賣扇庵4代目宮脇新兵衛

京都新聞の「ウは「京都」のウ」ファイル15「緑紅さんによろしく」第3回(4月23日)は、田中緑紅の郷土趣味社を核に集まった「野」の知的人脈の話。昭和9年3月7日緑紅が南紀白浜から京都へ戻る途中、南方熊楠を訪問したエピソードが日記の写真と共に紹介され…

大正10年新京極に誕生した京都美術館という名の画廊

高橋輝次『雑誌渉猟日録 関西ふるほん探検』(皓星社)の「渡仏日本人画家と前衛写真家たちの図録を読む」に大塚銀次郎が昭和5年神戸市元町に開いた神戸画廊が登場する。神戸の芸術家サロンと言うべき存在で、一時期は日本最初の画廊とされていたが、今は明…

神戸の古書店青甲堂書店の小島清が詠んだ古本短歌

いつもお世話になってます三密堂書店の100円均一台で小島清『對篁居』(小島清歌集刊行会、昭和55年4月)なる歌集を見つけた。三密堂の均一台に出る歌集・句集は時に変わった(褒め言葉)物が出るので、同書の頴田島一二郎「後記」を見ると、 作品の上から見…

昭和8年東大仏文科卒業生らが作った同人雑誌『港』

昨年のあちゅーい下鴨納涼古本まつりの竹岡書店3冊500円コーナーで戦前の同人雑誌2冊を発見。『港』創刊号(鈴木健郎、昭和8年6月)と10号(発行所三田書房・事務所港社、昭和11年2月)である。前者は定価30銭、後者は10銭。後者の表紙には「LE PORT」とある…

緑紅叢書の田中緑紅が遺した約70冊の日記

今年は田中緑紅(1891-1969)の没後50年。緑紅の「京を語る会」が昭和30年代から40年代に発行した緑紅叢書全53冊が解説や遺族の回想を収めた別巻付きで京都の三人社から復刻版を刊行中である。前半が昨年10月、後半が来たる6月発行である。小松和彦・倉石忠彦・…

大正14年南天堂で萩原朔太郎と服部之總は出会ったか

本郷白山にあった南天堂については、稲岡勝監修『出版文化人物事典』(日外アソシエーツ)の松岡虎王麿の項によると、 大正6年 父・寅男麿が神保町に開いた古書店が本郷白山上の五叉路北角に移り南天堂と改称、新古兼業となった店を相続 大正11年 近くのまき町…

服部之總は見たーーその時今和次郎の考現学が誕生したーー

昨日紹介した松尾章一『歴史家服部之總』中の服部之總の日記には、まだまだ驚くべき記述が幾つかある。たとえば、次のような記述である。 (大正十四年) 三月七日 (略)今さんとも打合わせて一緒に本処[ママ]へ帰る。セツルメント表玄関のマークを作ってもらっ…

大正14年湯ヶ島温泉で遊ぶ川端康成と服部之總

今日は川端康成の命日だ。そこで、小谷野敦・深澤晴美編『川端康成詳細年譜』(勉誠出版、平成28年8月)にも発行月の関係で記載のない松尾章一『歴史家服部之總ーー日記・書翰・回想で辿る軌跡』(日本経済評論社、平成28年9月)中の服部の日記から川端に登場し…

内田文庫主任彌吉光長と霊感透視家山本精一郎の『民俗の風景』(朝日書房)

一昨年文庫櫂で『民俗の風景』2巻1号(朝日書房、昭和10年1月。以下「本誌」という)なる雑誌を発見。表紙に霊感透視家山本精一郎主宰というアヤシゲな表記があるので購入。32頁。昭和9年8月創刊の『古典風俗』を改題したようだ。目次の一部をあげると、 山村に…

山根徳太郎の書簡で見る大正7年以降の月遅れ雑誌の取扱い

大阪歴史博物館*1の常設展示室の一角に難波宮大極殿跡の発見者山根徳太郎のコーナーがある。その山根が妻きよに送った手紙が、『相聞記』(山根徳太郎先生顕彰会、平成3年12月)として刊行されている。「カフェープランタンで天狗倶楽部と喧嘩した永井荷風」や「…

昭和15年における近江兄弟社の吉田悦蔵と近江療養院

数年前知恩寺の青空古本まつりで竹岡書店の3冊500円コーナーで昭和15年の日記帳(寶文館)を見つけた。9月8日と10月24日から12月30日までしか書き込みがないが、北支派遣部隊の岸本某から滋賀県八幡町近江療養所[ママ]内の塚口某宛の葉書が挟まっていて誰の日…

大阪CIE図書館のアメリカ人館長と対立して辞めた動物学者筒井嘉隆

これまた尚学堂で見つけた牛尾桃里画・筒井嘉隆文『ニッポンの鳥』(童画社、昭和17年11月)。表紙に破れがあって、1500円。3万部発行されているが、児童書なので残存数は意外に少ないか。国際児童文学館と三康図書館が所蔵。冒頭筒井は「お母様方に」で、 (略)…

今なお大月健が遊びに来る善行堂

ぱる出版の『日本アナキズム運動人名事典』(平成16年4月)の増補改訂版が出るようだ。この事典の「荒川畔村」「小倉清三郎」「坂本紅蓮洞」「添田亜蝉坊」「武林無想庵」「辻潤」「脇清吉」などを書いたのは大月健である。大月没後刊行された評論集『イメージとしての唯一者…

初めて古書ますく堂で買った本は松村久『本の周辺・やまぐち考』

西池袋の古書ますく堂へは、数年前書物蔵氏の車に乗せてもらい行ったのであった。いわゆる本の本が割とあって、買ったのがマツノ書店の松村久が書いた『本の周辺・やまぐち考』(マツノ書店、平成13年11月)である。オリジナル・ブックカバーもいただいた。 私…

萬年社の創刊号コレクション

平成11年に倒産した大阪の広告代理店萬年社が所蔵していたポスター、ビデオテープ等は、「萬年社コレクション」で見ることができる。だが、所蔵していた図書類の目録は公開されていないので、全貌は不明である。ところで、「株式会社萬年社蔵書之印」が押された…

千田是也演じるチャペック『虫の生活』(築地小劇場)の浮浪人も絵葉書に

村山知義の構成派の舞台装置が絵葉書になっていて、謎の人物による書き込みがあったことは「村山知義の舞台装置「朝から夜中まで」(築地小劇場)が絵葉書になっていた」で紹介した所である。実は、同一人物によると思われる文面がある絵葉書を同じく寸葉会で入手…

尚学堂で岡本帰一表紙絵『とりで』マクベス号(とりで社、大正2年)

寺町通二条下ルに尚学堂という古書店がある。「『漫画世界』創刊号(漫画世界社、昭和24年10月)」「日蓮上人研究会旧蔵の『妙宗』7編7号(師子王文庫、明治37年9月)」で紹介したことがある店で、向かって右側の雑然と山積みされた雑誌群には時にお宝が埋もれている…

京都の文人宿万屋主人金子竹次郎が残した日記

最近こっそりと追いかけているのが、京都にあった文人宿万屋の主人金子竹次郎である。谷崎潤一郎が初めて京都に来た時に知り合った人物でもあって、小谷野敦『谷崎潤一郎伝:堂々たる人生』(中央公論新社、平成18年6月)にも藝妓磯田多佳女の愛人岡本橘仙の甥…

博報堂の瀬木博尚と謎の女性写真師宮本篤子

神戸に古書つのぶえというキリスト教関係書専門の古書店がある。キリスト教にはあまり興味がないから行かないでおこうと長らく思っていた。ところがどっこい、何年か前の大阪古書会館全大阪古書ブックフェアで300円均一コーナーをやってくれて、掘り出し物が…

「小村侯記念図書館」印の押された森宣次郎『日支条約改訂問題の研究と批判』(大阪屋号書店)

蔵書印の面白さを知ったのは、岡村敬二『「満洲国」資料集積機関概観』(不二出版、平成16年6月)だったか。その後、「蔵書印/出版広告」さん(@NIJL_collectors)と知り合ったり、岡村先生の『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』(武久出版、平成29年7月)に書物蔵…

『乱歩傑作選集』(平凡社)の内容見本

新年度や新元号「令和」とはまったく関係のない『乱歩傑作選集』全12巻(平凡社)の内容見本の話。一昨年大阪古書会館たにまち月いち古書即売会で購入。唯書房出品1500円。四つ折りの紙に1500円出すのはややためらいがあったが、黄金仮面のインパクトに負けた。…