神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2017-01-01から1年間の記事一覧

伊良子清白が羊頭狗肉と酷評した大阪府立中之島図書館

『図書』(岩波書店)6月号に伊良子清白の孫伊良子序氏が「詩人清白の流離と純化ーー生誕百四十年と新出日記ーー」を書いておられる。それによると、『伊良子清白全集』2巻には25年分の日記のうち8年分が収録されたが、その後新たに8年分が発見され、解読中で…

戦前の京都書籍雑誌商組合を牛耳った阿波グループの栄枯盛衰

『京都書肆変遷史』(京都府書店商業組合、平成6年11月)は800頁弱もある大部な本だが、2588軒の書店の概要を記した「書店小史」の中に見開き2頁(184・185頁)の異質な箇所がある。タイトルは「木村一族(美馬郡半田町)の系図(阿波グループ)」。阿波グループとは…

戦前は7軒もあった天牛書店の支店

天神さんの骨董市で拾った(昭和)12年□月2日消印の年賀状。発信者は「大阪市西区松島千代崎橋西詰西入/書籍売買 天牛西書店/中山勇」。宛先は北区黒崎町の瓢林某。文面は、「謹賀新年/旧年中は」云々の決まり文句。最初は、天牛書店のパクリの古書店かと思…

花屋敷にあった別所彰善の精常興生院とは

『南木芳太郎日記』1巻(大阪市史料調査会、平成21年12月)に別所彰善の精常興生院という気になる施設が出てくる。 (昭和五年) 十月十七日 (略) 別所彰善氏より案内、松茸狩。 (案内) 朝八時半宅を出て阪急電車にて花屋敷、同駅を下り四、五丁上る処に精常興生…

山中貞雄とくろふね喫茶店の牧野月城

『京都新聞』6月8日朝刊の連載「即位と改元の舞台裏」第1部第3回は「昭和大礼警備」。昭和3年の「三・一五事件」の思想弾圧が京都でも吹き荒れたとして、美術監督久保一雄の逮捕、拘留を紹介。久保は、5年の刑期を終えた後、次々と傑作映画の美術を担当。戦…

お雇い英語教師リネルとヘリヤの経歴(続報)

わすの昔の蔵書目録については「オタどんの蔵書目録」で紹介したことがある。今目録の「お雇外国人」の所を見ると、130冊ほど持っていたようだ。しかし、あらかた書砦梁山泊に売ってしまい、ほとんど手元に残っていない。もちろん全部は読んでいないのだが、…

土佐藩のお雇い英語教師だったリネルとヘリヤのその後

リネル商会のリネルだが、神戸大学附属図書館のデジタルアーカイブ「新聞記事文庫」で「リネル」を検索したら、大正7年1月1日『神戸又新日報』の「神戸港の今昔/永住五箇国人」に談話が載っていることが判明。まず記者による「エチ、イー、リネル」の紹介は…

トーアホテル(TOR HOTEL)のリーフレットに残された書き込みの謎

お馴染みの古書店で神戸にあったトーアホテル*1のリーフレットをゲット。トアロードの由来とされるホテルとぐらいしか知らないが、一時期日本ホテル史に関心があったのと、紙物は二度と出会えない可能性が高いので確保、864円。三つ折りで折り畳んだ状態で縦…

芳賀徹の父芳賀幸四郎と小島威彦

小島威彦『百年目にあけた玉手箱』は、人名索引があればもっと活用されるだろう。さりげない記述の中にびっくらちょの人物が隠れていた。2巻(創樹社、平成7年1月)140頁の次の一節。 僕は弟の重正の来春に迫った受験が気になって、たまたま高等師範の秀才で共…

小島威彦の第五高等学校時代の同級生群像

小島威彦は、明治36年に現在の神戸市灘区に生まれ、西灘小学校→御影師範附属小学校→海城中学校→第五高等学校→東大文学部(中退)→京大文学部へと進学している。小島と第五高等学校文科甲三ノ組で同級生だった永松定の日記については「小島威彦をしきりに気にす…

キネトスコープを初輸入した神戸居留地14番館リネル商会に関する新情報

『ビブリア古書堂の事件手帖』7巻(メディアワークス文庫、平成29年2月)をようやく読了。「あとがき」にシェイクスピア関連の蔵書を見学した明星*1大学への謝辞が述べられていた。明星大学というと小島威彦が教授を務めた大学だが、最近小島の自伝『百年目に…

ホノルルで刊行された高畠華宵装幀の横山松青句集『アイカネ』

いつもお世話になっている三密堂書店の100円均一コーナーで箱の背に『アイカネ 横山松青句集』と書かれた本を発見。句集には興味がない上に未知の人物なので通常なら黙殺だが、最近句集の中にも生前興味深い経歴を有した人物の遺句集のような物があると気付…

小島威彦をしきりに気にする『風車』同人の相良次郎

永松定『二十歳の日記』(河出書房新社、昭和35年6月)に小島威彦が出てくる。 (昭和五年)七月五日 (略) ヴァーニジア・ウルフの本が、三省堂に来ていることをきく。相良、早まった結婚生活に少しあきたらぬようすで、「風車」をやっている連中のことや、小島(…

後藤静香が創設した希望社の社会教化事業要目(大正14年1月現在)

後藤静香の希望社の機関誌『希望』8巻1号、大正14年1月をシルヴァン書房から400円で入手。集めるつもりは全然ないが、どんな雑誌だったのか見本に一冊確保。大正14年1月現在の「希望社社会教化事業要目」が載っていたので、紹介。 (著述及び出版) 月刊『希望…

冨山房新社屋本建築設計平面図

去年だったか善行堂で冨山房のPR誌『読書界』3冊を入手。昭和3年10月号には庄司浅水「読書と家庭」掲載。『日本家庭大百科事彙』への反響として、 永く待つた末漸く入手いたしました。立派な出来栄、特に家庭的記事の詳細な点親切の編輯に満足しました。(…

佐々木惣一宛山本有三の参議院全国区立候補の案内葉書

これも天神さんの骨董市で200円。佐々木は京大教授で憲法学者。先日家で誰ぞらに京大総長と嘘を言ってしまったが、立命館大学学長でした。葉書の内容は、安倍能成・大内兵衛・志賀直哉・長谷川如是閑・正宗白鳥らが山本有三を参議院議員全国区の候補者として…

みやこめっせで拾った満洲冨山房の値札半券が付いた古本

古書展の初日は人も多く気忙しく、ゆっくりと本を調べる時間がない。わしがこのしょーもない棚を見てる間に林哲夫氏や書物蔵さんがトンデモない本を拾ってるかもしれないと考えると、気ばかりあせってしまうのである。その点2日目以降だと客の数も減り、ある…

飛鳥園内新しき村奈良支部の新藤正雄宛柳宗悦講演会の案内葉書

天神さんの骨董市で拾った葉書。「奈良博物館横 飛鳥園内」の「新しき村奈良支部」から天理中学校の新藤正雄宛葉書である。消印は不鮮明で3(又は2)年11月17日。 新しき村奈良支部は、『武者小路実篤全集』18巻(小学館、平成3年4月)の年譜によると、 大正15年…

明治期の京都における染織図案史の修正を迫る『京都図案会誌』を発見

京都図案会事務所発行の『京都図案会誌』を掘り出した。2号が明治37年7月、3号が同年9月、7号が38年4月発行である。編輯兼発行者は北村直次郎、後に三越大阪支店美術部の主任になる人のようだ。サイズは新聞紙半裁大(縦43cm、横28cm)で4頁。第2号と第3号は毎…

死してなお公職追放となった満川亀太郎

『二級河川』17号(金腐川宴游会、平成29年4月)*1に掲載されたトム・リバーフィールド「『公職追放に関する覚書該当者名簿のメディア関係者・文化人五十音順索引』」で驚いた該当者は、満川亀太郎でした。満川は昭和11年5月に亡くなっているので、当然該当者…

「『公職追放に関する覚書該当者名簿』のメディア関係者・文化人五十音順索引」が完成

リバーフィールド氏に『公職追放に関する覚書該当者名簿』のうち出版人を抜き出して五十音順索引にしてくれたらなあと呼び掛けたら、なんと『二級河川』17号(金腐川宴游会、2017年4月)でやってくれました。しかも、出版関係以外に、新聞、映画、放送関係者や…

あやすーぃ雑誌『夜の神戸』の編集者山本周五郎と寺田新社長

山梨県立文学館で4月29日(土・祝)から6月18日(日)まで「特設展歿後五十年 山本周五郎展」開催。ということで、山本周五郎ネタを。木村久邇典『山本周五郎の須磨』(小峯書店、昭和50年9月)に、大正期山本が須磨に下宿し、夜の神戸社で観光ガイド誌『夜の神戸…

第一神戸高等女学校教諭田中喜美代さんのその後

今年初の寸葉会(絵葉書を中心とする紙物の即売会)で1枚だけ買ったのが、「神戸市坂口通一丁目関西学院構内」の「田中喜美代先生」宛の年賀状。発信者は印南郡大塩町の山本という女性。切手を貼る所には、「TORII ShOTEN」とある。切手を貼った痕跡はないので…

小寺廉吉と辻村太郎が旅した硫黄島の思い出

サンボーホールの古本市で使用済み絵葉書1枚100円の中から発見。「神田区一ツ橋高等商業学校内 小寺廉吉」宛で、発信者は本郷弥生町の辻村太郎。消印は不鮮明だが7年9月に見える。図柄はハワイのパパイアで、文面には「もう一年たち申し硫黄島の二夜は美しき…

目録コレクター『目録の目録雜考』の西岡祥吉

南木芳太郎の日記*1に『目録の目録雜考』という本が出てくる。 (昭和五年) 十一月十七日 (略)堺の西岡祥吉氏より『目録の目録雜考」贈り来る。 「目録の目録」とは気になるので、国会図書館デジタルコレクションで見てみた。『目録の目録雜考』第1輯で、昭和…

書砦梁山泊から伝記特集の古書目録

紹介するのが遅れたが、2月に書砦梁山泊から古書目録46号、伝記特集が出た。近代以降の自伝・回想録・日記・評伝・追悼録の特集で、被伝記者の五十音順に並べているのが特色である。更に書名や著者名の被伝記者名の部分を太字にしたり、被伝記者名を補記する…

京都精華大学公開講座ガーデンで斎藤光先生の「幻のモダン文化 京都の「カフェー」史を味わう」

2017年度京都精華大学公開講座ガーデンのパンフを見てたら、斎藤光ポピュラーカルチャー学部教授による「幻のモダン文化 京都の「カフェー」史を味わう」を発見。5月27日(土)12時ー16時、レストラン菊水集合で食事の後、「いまも形を変えて存在する「カフェ…

創業100周年を迎える三密堂書店

『三密堂書店最新入荷情報』平成29年5月号を入手。橘呂尚(水野杏紀)「百年三代続く古本屋さん、三密堂書店」によると、三密堂書店は大正6年開店で、もうすぐ100年になるという。『京都書肆変遷史』(京都書肆変遷史編纂委員会、平成6年11月)によると、大正元…

昭和戦前期の京阪神における文献研究家

『南木芳太郎日記ーー大阪郷土研究の先覚者ーー』1巻(大阪市史料調査会、平成21年12月)で昭和5年6月27日の条に貼り付けられた『夕刊大阪新聞』同月24日の記事が翻刻されている。内容は、南木が相談役となり大正15年4月発足した浪速叢書刊行会から発行された…

ツイン21古本フェアではどんだけ?こんだけ!

ツイン21古本フェアも今日で終了。最近急成長中の「ゆずぽん」なる強敵が油断してる(?)間に色々ゲットぢゃ。 池崎書店出品では 『本箱』(本箱編集室、平成14年9月)・・・大阪古書会館の古本大学でモズブックスさんが大阪の古書店マップが載っていると紹介し…