神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

愛書家としての伊藤長蔵

ぐろりあ・そさえての創業者伊藤長蔵は、愛書家としても知られた存在であった。『書物関係雑誌細目集覧二』によると、伊藤が編輯兼発行人として、『書物の趣味』を昭和2年11月創刊、7年3月廃刊、全七冊。発行所は、京都市知恩院山内信重院の書物の趣味社、発…

堺利彦と『平民日本史』の編集

堺利彦の売文社は、大正2年3月四谷区四谷左門町から四谷須賀町へ移転、翌4月京橋区南佐柄木町へ移転。これに関する黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の記述は混乱している。『パンとペン』の ・278頁では大正2年4月…

植島啓司講師はどこだ・・・

日経の「人間発見」に連載された阪大学長鷲田清一「知の地平をひらく」の1月19日夕刊分によると、 その2年後、定年退職された宗教学の先生の後任として、講師に宗教人類学者の植島啓司さんが来た。東大出身で、以前から知り合いだったんですが、本当に型破り…

ぐろりあ・そさえての伊藤長蔵一族

ぐろりあ・そさえての創立者伊藤長蔵の一族について、多少判明した。兄の伊藤長次郎は、貴族院議員(多額納税者議員)なので人名事典に出ている。『昭和人名辞典』で復刻された『第十四版大衆人事録 東京篇』(昭和17年10月)などによると、 伊藤長次郎 [閲…

青木正美『ある「詩人古本屋」伝 風雲児ドン・ザッキーを探せ』(筑摩書房)

近刊情報によると、『日本古書通信』で予告されていた、青木正美『ある「詩人古本屋」伝 風雲児ドン・ザッキーを探せ』(筑摩書房) が2月23日刊行、税込価格:2,940円。 詩人ドン・ザッキーとは何者か。詩壇を疾駆した大正末、古本屋で暮らした戦後昭和。詩人…

堺利彦と島中雄三の文化学会

文化学会という団体は、詳細不明だが、大正8年島中雄三らにより創立された。堺利彦の翻訳で刊行されたエドワード・べラミー『社会主義の世になったら』(文化学会出版部、大正9年4月)によると、発行兼編輯者は、「小石川区小日向台町二ノ一九 文化学会代表…

内田樹の父、内田卓爾はあやすーぃ?

内田樹氏の父はその詳しい経歴について、次男の樹にも語らなかったという。後藤正治『表現者の航跡』(岩波現代文庫、2009年6月)によると、 父は一九一二(明治四十五)年生まれ。明治最後の人であるが、その詳しい来歴を内田は知らない。語らない父であっ…

千代田区立千代田図書館で「戦前の出版検閲を語る資料展」

誰ぞが、宣伝してくれと言ってるような、言ってないような気がするので、紹介。3月26日(土)まで、千代田図書館9階で、「戦前の出版検閲を語る資料展「浮かび上がる検閲の実態」」開催中(協力:国立国会図書館、江東区立深川図書館)。 展示関連講演会 本…

黒岩比佐子さんと中島俊郎先生

「daily-sumus」氏(1月22日分)が紹介していた神戸新聞1月19日夕刊に、黒岩比佐子さんについて「逝去される半年くらい前であっただろうか、「古書をすべて処分しようと思う」、と突然に電話で伝えてきた。声に力がない」とある。結局、本の処分は思いとどま…

白柳秀湖『民族日本歴史』完成祝賀会

黒岩比佐子『パンとペン』に、堺利彦と松本清張をつなぐものとして白柳秀湖『民族日本歴史』が出てくる。全5巻で昭和10年4月から同年12月にかけて刊行。その完成祝賀会は翌11年2月6日に開催。当日の様子が、高橋邦太郎「銀座日誌抄」『銀座』昭和11年6月号に…

横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』(ピラールプレス)刊行記念トークイベント(横田順彌氏×長山靖生氏×北原尚彦氏)

本書の編集者である司会の川村伸秀氏*1の、「今日この前に黒岩比佐子さん関係のイベントがありましたが、生きておられればこのトークに参加されていたはずです」との挨拶に心の中で泣いた。ヨコジュンさん、長山靖生氏、北原尚彦氏、お疲れさまでした。あり…

黒岩比佐子さんと岡林信康氏

「フォークの神様と鳩」『正論』平成13年12月号によると、『伝書鳩』(文春新書)の刊行により、黒岩比佐子さんは、「鳩ともだち」とも呼ぶべき人脈が広がったという。様々な便りをもらい、その一人が、フォークの神様岡林信康氏だった。同年秋に会うことも…

総長と学長の違い

黒木登志夫『落下傘学長奮闘記』(中公新書ラクレ)によると、 国立大学のなかで、旧帝大だけが学長を「総長」と呼んでいる。しかし、国立大学法人法のなかには、「総長」という呼称は記されていない。あくまでも、内部的な慣習に過ぎず、極端に言えば、法律…

横田順彌・黒岩比佐子関連イベント

なんとまあ、今月22日の横田順彌『近代日本奇想小説史』(ピラールプレス)刊行記念トークイベントには、ヨコジュンさん御本人も来場との追加情報が(http://www.tokyodoshoten.co.jp/)。ヨコジュンさんと黒岩さんについては、昨年12月7日参照。 横田順彌『近…

昔「三銭均一食道楽おとわ亭」、今「キッチンジロー」(その2)

PsychomPsychoさん(http://twitter.com/PsychomPsycho)が、地元民(?)の力を発揮して調べてくれました。ありがとうございました(その1は、昨年12月23日参照)。 @jyunku やはりキッチン・ジローのビルはおとわ亭の跡地でした。ギャラリーはご親族の方…

心理学者多湖輝氏と奇術研究家阿部徳蔵

1月18日付朝日新聞夕刊「心理学者・多湖輝 追憶の風景 目白」。 7歳のころ、僕ら邸内の子供たちも、徳川(義親)さんがよくお屋敷に招いていた阿部徳蔵師匠に奇術を教えてもらいました。種も仕掛けもあるのに不思議な世界。今でも奇術にひかれています。 阿…

満川亀太郎日記にみる売文社の分裂

満川亀太郎日記に、売文社分裂前後の高畠素之、北原龍雄の名前が出てくる。 大正8年3月4日 午後出社、夕刻より清風亭に第七回老壮会を開く。(略)北原龍雄君来会。売文社にて議論分れ、高畠君及同君等は国家社会主義を新に標榜し来らんとのことなり。 3月15…

孝行娘の黒岩比佐子『明治のお嬢さま』(角川選書)

『婦人公論』2009年3月7日号の「私の書いた本」で、黒岩比佐子さんは、次のように語っている。 数年前から古書の魅力にとりつかれて明治時代の女性誌をたくさん集めていたこともあり、編集者に「明治のお嬢さまのことを書いてはどうですか」と提案されたのが…

桑沢洋子が働いた神保町の喫茶店

桑沢学園創立者の桑沢洋子さんは、神保町の喫茶店で働いていたことがある。桑沢の『ふだん着のデザイナー』(学校法人桑沢学園、2004年3月)によると、 私はどうしても東京にとどまりたかった。そこで一番先に選んだ職業は、神田の学生街にある喫茶店の店員…

小林秀雄はデニケンの古代宇宙飛行士説三部作を読んだか

現国の問題に使われた小林秀雄の文章の難解さに泣かされた者としては、丸山眞男よりも小林をひっぱたいてほしいものである(笑)。さて、そんな小林が、エーリッヒ・フォン・デニケンの角川文庫版を所蔵していたと聞くと、驚く人もいるだろう。自分で買った…

堺利彦の告別式での非戦論

黒岩比佐子さんは、『パンとペン』(講談社)の412頁で、堺利彦の告別式において、真柄が謝辞で「帝国主義戦争絶対反対」と口にしたところで、警官に中止命令を受けたに違いないと推定している。ところで、斎藤茂吉が堺の告別式について日記に書いている*1。…

大日本帝国にBUNSOKU!(その2)

いきなり(その2)から始まるが、(その1)は畏友の書物蔵氏が『文献継承』17号(金沢文圃閣、2010年11月)に書いているから、詳しくはそれを、とりあえずは「書物蔵2008年3月10日」を見てちょ。戦前、藤山工業図書館という私立の専門図書館があった。昭和…

戦場移動図書館

『本邦の図書館界(十三)』(岡山中央図書館)によると、 戦場移動図書館 戦地にゐる将兵の無聊を慰め、又インテリ出身者の文化的欲求を満すため、北支と上海の全戦線に亘つて移動的な戦場図書館を設置すべしとの計画が文部省成人教育課から発案され、目下…

茂木久平の死

売文社分裂の際、高畠素之側についた茂木久平。黒岩比佐子さんの『パンとペン』では、佐野眞一『阿片王 満州の夜と霧』・『甘粕正彦 乱心の曠野』にも出てくる一筋縄ではいかない人物とされている。佐野氏の後者の本は、文庫化に際し、茂木に関する情報が加…

中野三敏先生の和本リテラシー

『出版ニュース』1月上・中旬合併号の「今年の執筆予定」によると、 中野三敏先生の予定は、 ・和本リテラシーの回復に向けて ・近世思想史上の李卓吾受用(ママ) ・邦人法帖目録 ・洒落本書誌一番目を除き、私には何のこっちゃの世界。中野先生の和本リテ…

堺利彦の「ユウモアの夕べ」

鈴木省三が、三省堂書店を辞め、創業期から小学館に勤めていた時代の話。鈴木は、堺利彦の『桜の国・地震の国』を含む『現代ユウモア全集』(小学館・集英社内の現代ユウモア全集刊行会が発行)の担当だった。鈴木の『わが出版回顧録』(柏書房、1986年12月…

黒岩比佐子『『食道楽』の人 村井弦斎』の瑕瑾

黒岩比佐子さんの『『食道楽』の人 村井弦斎』(岩波書店)をオールタイムベスト10の一冊に選んだことがある(2007年12月8日参照)*1。これは今でも変わっていない。しかし、その名著にも少しだけ誤りがある。一つ目に関しては、2006年7月13日に「『村井弦…

幻のミネルヴァ日本評伝選

ミネルヴァ日本評伝選の執筆予定者であがっていて、その後一覧から消えた場合、執筆予定者が亡くなったのだろうと思っていたが、そうでない事例もあるようだ。2006年7月現在の一覧と2010年12月現在の一覧を比較して、消えているものをあげてみると、 平田篤…

講談社創業100周年記念出版書き下ろし100冊の最終決算

黒岩比佐子さんの『パンとペン』は、当初講談社創業100周年記念出版書き下ろし100冊の予定の中には入っていなかった。他にもこのような人は17人いる。 書き下ろし100冊の当初執筆予定者ではなかった18人 朝倉かすみ、安達千夏、飯塚真紀子、石井光太、上田秀…

二科会の初日をのぞく里見とんと久米正雄

昭和7年9月3日〜10月4日第19回二科美術展覧会が東京府美術館で開催された。宇野浩二の日記によると、里見とんや久米正雄らが初日に観覧している。 昭和7年9月3日 二科会場で、林倭衛、中村研一、里見弓享、久米正雄、石井白[柏]亭、正宗得三郎諸氏に会ふ。