神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

君は、通神保町にあった私立中央図書館を知っとるか?

『文部省年報』第53(大正14年度)の「公私立図書館別一覧 大正十四年度」の東京の欄に、 中央図書館(私立) 東京市神田区通神保町 というのがあがっている。和漢書2,881冊、洋書338冊、開館日数は307、閲覧人員は29,215。この一覧は網羅的なものではなく、…

カフェー南天堂という名の南天堂書房の階上喫茶部

daily-sumusに南天堂書房のレッテル(ラベル)が出ていた。→「daily-sumus」の6月25日分。 寺島珠雄『南天堂 松岡虎王麿の大正・昭和』には、南天堂書房の二階の喫茶兼レストランには固有名はなかったとある。にわかには信じがたく、「じゃあ客はどう呼んで…

山王書房の関口良雄と八木福次郎が泣いた夜

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』で書籍コード213は柴田宵曲『煉瓦塔』500部限定版(日本古書通信社、昭和41年9月)。 この本について、柴田宵曲の日記(『日本古書通信』平成3年12月号)を見ると、 昭和41年7月9日 八木君より電話あり、校正出でしよし、二時半…

『近世科学の宝船』の著者高田徳佐は、マッド・サイエンティスト・ライターだったか?

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』の書籍コード163は高田徳佐『子供達へのプレゼント 近世科学の宝船』(慶文社、大正14年2月初版、3月6刷)。黒岩さんのブログへのコメントには「ヨコジュンさんが紹介しているかは思い当たりません(かねてから、ヨコジュンさん…

坂倉準三邸に集まる若き建築家達

生田勉の日記に、坂倉準三が出てきた。 昭和14年11月29日 坂倉準三氏宅にて、忠霊塔懸賞の為、徹夜。本城和彦、丹下健三、浜口隆三、其の他日大の学生二名。愉し。夫人も徹夜いろいろの心づくし。 11月30日 坂倉さん十一時過ぎ円タクで入江君のも一しょに朝…

『キング』の時代に一撃を放つ岡本綺堂

佐藤卓己『『キング』の時代』によると、 本来、『キング』創刊は当初、一九二三年十二月発行の二四年新年号と予定されていた。だが『キング』誌名登録の六日後、一九二三年九月一日『キング』の用紙について紙問屋岡本商店の岡本正五郎と商談中に激震が走っ…

『日ポンチ』の編集者鶯亭金升

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』の書籍コード047は、『風俗画報臨時増刊 日ポン地』(東陽堂、明治37年10月20日)。この『風俗画報』の臨時増刊でポンチの特集号である『日ポンチ』*1の編集を、鶯亭金升が担当していたようだ。鶯亭の日記によると、 明治37年12…

自彊術と伊東静雄

大正14年渋沢栄一が中井房五郎の自彊術を受けていたことは、1月19日に言及した。この年、ある青年も自彊術にはまっていた。伊東静雄である。『伊東静雄日記』(思潮社、2010年3月)によると、 大正14年9月11日 自彊術、安達氏の室に行き、十一時日記をつけて…

稲岡奴之助はやはり新聞記者だった

稲岡奴之助に『新聞記者』(駸々堂、明治34年4月)という作品があるので、もしや稲岡自身も新聞記者ではなかろうかと思っていたら、正解だった。「新聞紙通信社一覧表 明治四十年十一月調査 警視庁」*1によると、『日本』の記者として稲岡の本名稲岡正文があ…

谷崎潤一郎「晩春日記」はどこまで真実か

安藤礼二氏が『すばる』の連載で、『谷崎潤一郎伝』の次の一文を引用したので、猫猫先生もお喜びのようであった。 特に谷崎潤一郎をかわいがらなかったこの実母の死について、谷崎が衝撃を受けたという資料は見当たらない。 谷崎の実母が丹毒にかかり、大正6…

明治期のグラフ誌の発行部数

黒岩比佐子『編集者国木田独歩の時代』によると、明治期にグラフ誌は26誌創刊されている*1。その一回当たりの発行部数について調べてみると、 ・明治32年 風俗画報 3,509*2 (「保証金ヲ要スル定期刊行雑誌配布部数 明治三十二年中」『明治三十二年警視庁…

帝国図書館に土足で入館できるようになった年

上野の帝国図書館がいつから土足で入館できるようになったかについて書かれた文献をどこかで見たような気もするが、それとは別に生田勉の日記でも判明する。 昭和7年3月12日(土) 朝七時起床。上野図書館に着いたら例の長い行列をなしていたが、少し早すぎ…

弟精二の再婚披露宴に出席する谷崎潤一郎

猫猫先生が言及していたが、青野季吉の日記に谷崎精二の再婚披露の会が出てくる。 昭和16年11月3日 ○午後、谷崎精二君の結婚披露のお茶の会に赴く。大隈邸(会館)の庭を散歩、式場にて来賓を代表して一寸挨拶す。 11月4日 ○文展を観に行く。会場にて廣津和…

波多野養作と宗方小太郎

波多野養作、波多野烏峰、波多野春房については、ma-tango氏*1、小谷野敦氏*2、私*3の三者で一時期盛り上がったことがある。若干の疑問は残るが、結局、波多野養作≠波多野烏峰=波多野春房ということになったと思う。その波多野養作だが、明治37年末〜40年春…

稲岡奴之助は、「ぬのすけ」か、「やっこのすけ」か?

稲岡奴之助だが、御遺族の方によると、「やっこのすけ」と読むと聞いているというので、手持ちの資料を整理してみました。1 「ぬのすけ」とする資料 一 『明治文学書目』(村上文庫、昭和12年4月) 奴之助(ルビ:ぬのすけ) 稲岡正文[別号]蓼花、桜庵 明治…

NHK「クエスタ」のモデル「二十の扉」に出てた里見とん

三角寛と共にサンカのセブリを訪問したNHKのアナウンサー藤倉修一に、『マイク人生うらおもて』という著作がある。そこには、現在NHKで人気の「クエスタ」のモデルと思われる「二十の扉」という番組について書かれている。 中でも二十七年六月の特集「…

10月創刊の筑摩選書に小谷野敦『現代文学論争』

臼井吉見『近代文学論争』は明治から昭和二十年代までの文学論争を扱っている。上巻は、逍鴎論争、『舞姫』論争、人生相渉論争、自然主義論争、『白樺』論争、『宣言一つ』論争、内容的価値論争、散文藝術論争、心境小説論争、新感覚派論争、文藝批評方法論…

島尾敏雄が聞いたNHKラジオ「社会探訪」の「山窩の瀬降りを訪ねて」

『新潮』連載の「島尾敏雄 終戦後日記」が終了。楽しませていただいたが、先月号の昭和25年9月9日の条には驚いた。 昭和25年9月9日 Radioの社会探訪、山窩のセブリを尋ねての録音。突然新聞記者がフラッシュをたいたので山窩の女房怒る。心にしみて残る。 …

大伴昌司の一番の自慢は『アメージング・ストーリーズ 日本語版』

桂千穂氏は『シナリオ』で連載の「桂千穂の映画漂流記」に二回にわたり、大伴昌司について書いている。そのうち、64巻8号(平成20年8月)の「第22回続・大伴昌司のこと」によると、 利殖の才能に長けて懐が温かかったせいか、海外ミステリイはもとより、おび…

国木田独歩が命を縮めてつくった近事画報の発行部数

黒岩さんの『古書の森 逍遙』で書籍コード078は『近事画報』第83号(近事画報社、明治39年3月1日)、080は同誌第89号(同社、39年5月15日)。以前(昨年11月21日)言及したが、この頃の同誌の発行部数が、『原敬関係文書第八巻』の「雑誌一覧表 明治三十九年…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足(その6)

松塚俊三・八鍬知広編『識字と読書 リテラシーの比較社会史』(昭和堂、2010年3月)所収の鈴木俊幸「明治前期における書籍情報と書籍流通−信州安曇郡清水家の書籍購入と兎屋誠−」によると、信州安曇野郡常盤村の清水家に残る文書群(長野県立歴史館所蔵)の…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足(その5)

『古書の森 逍遙』において、書籍コード199は『女性』(新生社、昭和21年8月)。黒岩さんは、新生社の代表青山虎之助について、 青山は敗戦直後に新生社を設立し、同年一一月に『新生』を創刊している。『新生』はあっという間に売り切れて増刷となり、青山…

今日泊亜蘭の祖父水島慎次郎

水島爾保布を『昭和人名辞典第一巻』で引くと、 水島爾保布 漫画家 豊島区堀之内三三 [閲歴]本府慎次郎長男、明治十七年十二月八日生る。同丗九年東京美校卒業、大阪朝日、東京日日歴勤。帝展入選三回 [家族]妻幸(明一八)本府山室精三女 長男太郎(明治四三…

廣瀬千香と秋庭太郎

廣瀬千香『思ひ出雑多帖』(日本古書通信社、平成2年7月)所収の「驪山荘 杉野・秋庭・相磯諸氏」によると、 杉野[喜靖]氏が日本大学の講師のころ、秋庭氏は同大学の図書館主任だつたと聞いてゐた。永井荷風伝の起草中で、資料の多くは杉野氏から提供された…

国際UFO観測隊極東本部

平野威馬雄といっても、平野レミの父親としてしか知らない人が多いかしら。威馬雄の『それでも空飛ぶ円盤は飛ぶ!』(高文社、昭和35年5月)によると、昭和34年7月24日の『内外タイムス』の「おとぼけ記者参上」で、宇宙友好協会理事松村雄亮が記者との対談…

幻に終わったファンタジー・怪奇恐怖小説の同人誌

昭和38、39年頃、島内三秀氏(桂千穂氏)、長谷邦夫氏らによって、怪奇小説の同人誌を作る計画があったことについては、6月1日に言及したところである。これは、昭和37年のことだったと判明。 『宇宙塵』54号(昭和37年3月)の「宇宙塵さろん」によると、 島…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足(その4)

水島幸子といっても、一部のSFファンしか知らないだろうが、今日泊亜蘭の母で、水島爾保布の妻である。『古書の森 逍遙』の書籍コード116『婦人世界』(実業之日本社、明治43年12月)の「新聞雑誌婦人記者花くらべ」で、水島は白百合にたとえられていると…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足(その3)

書籍コード183は軍用鳩調査委員会編『軍用鳩通信術教程草案』(北林鳩具店印刷所、昭和10年)。これの原型は既に昭和2年6月には完成していたようだ。2007年3月17日に書いたが、井崎於菟彦大尉が、「鳩通信仮教程」を三田村鳶魚に渡している。三田村の日記の…

黒岩比佐子『古書の森 逍遙』(工作舎)への補足(その2)

黒岩さんの『古書の森 逍遙』への補足、というか蛇足(その2)*1。030『獅子王』(青木嵩山堂、明治35年10月)、055『海賊王』(隆文館、明治38年4月)の著者稲岡奴之助の経歴については、黒岩さんも少し書いておられるが、『日本近代文学大事典』から引用…

原田三夫が見た波多野春房

星新一展には、日本宇宙旅行協会発行の火星土地分譲予約受付証まで展示されていましたね。その協会の理事長だったのが原田三夫。原田の自伝『思い出の七十年』(誠文堂新光社、昭和41年3月)に波多野春房が出てくるので紹介しておこう。 奇縁にも私は、前に…